2009年4月2日木曜日

asahi shohyo 書評

「笑う脳」の秘密!—賢い人のアタマは何が違うのか? [著]伊東乾

[掲載]2009年3月25日朝刊

■脳を上手(うま)く働かせるメカニズムとは

  著者は作曲、指揮の分野で活躍する芸術家であり、その科学的研究を専門分野とする研究者でもある。東京大学では「芸術実技」の教官として初めて招聘(しょ うへい)された。そんな逸材が専門分野の研究を分かりやすく解説しつつ、かつ心の処方箋(せん)ともいうべき本書を上梓(じょうし)した。日経ビジネス・ オンラインでアクセス数歴代トップの実績を誇る作者だけに、大変刺激的な内容であり、一気に読ませる。

 まず演奏家がいかにアガラない工夫をしているかといった秘密に始まり、効果的な脳の働かせ方を豊富なエピソードと共に説く。し かも脳内の血流に含まれる酸素量を図示したデータ等の科学的な裏づけによって、大脳をより活性化させるメカニズムを解き明かす。そして、賢く生きるために 私たちの知能全体が生き生きとした状態、著者のキーワードでもある「笑う脳」を提案するのである。

 著者によれば、物事を科学的に分析するだけでは「新たにモノを作り出す」ことはできない。創造には不確定な要素が入り込むから だ。必要なのは、「人文・社会科学」と「自然科学」、そして「アートとスポーツ」という3分野をバランスよく学ぶことである。とりわけキレる原因とされる 「情報生活習慣病」にかからないためには著者の説く処方箋が有効といえるだろう。

表紙画像

「笑う脳」の秘密!

著者:伊東 乾

出版社:祥伝社   価格:¥ 1,575

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