2009年4月2日木曜日

asahi shohyo 書評

西洋博物学者列伝—アリストテレスからダーウィンまで [編著]ロバート・ハクスリー

[掲載]2009年3月25日朝刊

■自然界の神秘に挑んだ偉大なるアマチュア学者たち

  汗まみれになって、日がな一日、昆虫採集に夢中になった夏休みをなつかしく思い出す人も多いことだろう。本書を繙(ひもと)くと、自然界の神秘に魅せられ た少年少女時代の胸おどる思いを大人になっても失うことなく、自然を秩序だてて理解しようとした先人たちの営みの滔々(とうとう)たる流れに感嘆すること だろう。取り上げているのは、古代のアリストテレスから、リンネ、ダーウィンなどに至る39人の博物学者。その業績、人物像、学問上の系譜などを、簡潔な 文章で描き出している。

 博物学、すなわちnatural historyとは、動物学・植物学・生物学・地質学・地理学などが未分化だった頃の学問の名称。主として医師などのアマチュアが研究した博物学が、19世紀後半になって、高度に専門化・細分化していく。

 本書でつかみ取ることができるのは、2000年以上にわたるぶ厚い知の蓄積があったからこそ、最近の百数十年間に科学技術が急 速な進歩を遂げることが可能になったという事実だ。進化論を共同発表したダーウィンとウォレスにしても、彼らが地質学や分類学などの新しい学説の影響を受 けていたことがよくわかる。

 特筆すべきは、200点近い鮮やかな図版が盛り込まれている点だ。写実に徹した動植物の細密画や標本の写真などが、博物学者たちの飽くなき探究心を訴えかける。

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 植松靖夫訳

表紙画像

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