2009年4月2日木曜日

asahi shohyo 書評

教養脳を磨く! [著]林望、茂木健一郎

[掲載]2009年3月25日朝刊

■独創も知性も教養からしか生まれない

  本書で対談する碩学(せきがく)二人は言う。日本の国会討論がつまらないのは、型通りの質疑応答に終始しているからであり、そこには「教養」のかけらも感 じられない、と。教養とは、学歴でも肩書でも詰め込んだ知識の多寡でもなく、物事を論理的に考える力である。それを二人は「サイエンス」と呼んでいる。ど のような対象であっても科学的なアプローチは可能であり、その歩み寄りこそが教養なのである。

 かたや気鋭の脳科学者、そして独特の視点で古典を探求する書誌学者。世代も専門分野も異なる二人だが、共通点が一つある。それ は、ともにイギリスのケンブリッジ大学に学び、「知のカルチャーショック」を受けたことである。イギリス的知性に触れ、日本のアカデミズムとの違いに驚 き、感動した経験を持つ。特にわが国と異なるのは「教養」の厚みであった。本書で二人は、イギリス人の国民性に始まり、進化論から和歌に至るまで、縦横無 尽に語り尽くす。そうした中で、文学、音楽などの古典の味わい方、他分野の人たちとの交わり方を指南してくれる。

 教養とはあくまで政治、学問などの土壌となるものである。土壌が豊かでなければ大木は育たない。だからこそ、遠回りであっても「教養脳」を磨く必要があるのだ。そうしたことを忘れ、知識ばかりを植えつけたのが、戦後日本の教育といえるかもしれない。

表紙画像

教養脳を磨く!

著者:茂木 健一郎・林 望

出版社:エヌティティ出版   価格:¥ 1,260

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